●胃食道逆流症
■胃食道逆流症って、いったいなんでしょうか?
これは胃内容物の食道内への逆流に起因する病態のことをいいます。
英語ではgastro-esophageal reflux disease、頭文字をとってGERDと呼びます。
症状と内視鏡所見から、3つの型に分類することができます。
1)胸やけがあり、内視鏡でもビランや潰瘍などの所見があるもの
2)胸やけはないが、内視鏡でビランや潰瘍などの所見があるもの
3)胸やけはあるが、内視鏡所見のないもの
1)と2)は逆流性食道炎、3)は非ビラン性胃食道逆流症と呼んでいます。
(下段の内視鏡写真で、左は4時方向の潰瘍が、右は2時方向のビランが観察されます)
■内視鏡の所見は?
胃食道逆流症の中で、ビランや潰瘍などの内視鏡所見のあるものを「逆流性食道炎」とい
い、程度によりA、B、C、Dの4段階に分類しています。
(下図の赤い部分がビランや潰瘍です)
(Gaster Online消化器メデカルクリップアート集より引用)
■症状は?
主な症状は、胸やけと胃内容の逆流感で、とても不愉快な症状です。すなわち“みぞおち”
から“のど”にかけての“やけるような灼熱感”や“酸っぱいものや苦いものの逆流”
などが定型的症状といわれていますが、胸やけをうまく表現できなかったり、その他の多彩
な症状のために、耳鼻科、呼吸器科、循環器科などを受診することも少なからずあります。
食道以外の非定型症状には、“のどのいがいが感”“口が苦い”“胸が痛い”“のどが痛い”
“耳が痛い”“せきが出る”“喘息様発作”などがあげられています。
■検査は?
内視鏡検査は必ず受けて、食道にビランや潰瘍などの所見があるかどうかを確認します。
内視鏡所見のない場合は、PPIテストを行います。これは胃食道逆流症の治療薬である
プロトンポンプ阻害剤(PPI)を投薬して、症状の改善があるかどうかの反応をみるテ
ストです(診断的治療といいます)。投薬により症状の改善が得られれば、胃食道逆流症と
診断します。
■治療は?
プロトンポンプ阻害剤(内服)がとても有効です。
■現状について
アメリカでは約1000万人が胃食道逆流症に罹患しており、日本でも内視鏡所見がないにも
関わらず、胸やけなどの症状を訴える「非ビラン性胃食道逆流症」の急速な増加が取りざ
たされており、胃食道逆流症の60〜70%を占めるといわれています。
その原因として、肥満とピロリ菌感染率の低下(ピロリ菌は胃酸分泌を抑制する)がクロ
ーズアップされています。はっきりとしたエビデンスはありませんが、統計的には胃がんが
増加(ピロリ菌感染の増加)すると、逆流性食道炎は減少し、逆に胃がんが減少すると、
逆流性食道炎は増加する傾向にあります。
胸やけなどの症状のある方は、まず内視鏡検査を受けることをお勧めします。