●先人の教え
■貝原益軒という人物
「かいばらえっけん」と読みます。本名は篤信(あつのぶ)、通称久兵衛(きゅうべい)、
益軒は号であります。江戸時代の初期から中期にかけて活躍した医学者、儒学者、本草学
者であり、教育家でもありました。
■貝原益軒のどこが偉いか
彼は84才の長寿を全うしました。江戸時代の平均寿命を考えると、かなりの長生きであっ
たといえます。「君のために身命を捨てる」時代に、「この世で一番大切なものは命であり、
それを宿す体である」といい、養生を心がけるべきであると説いています。
生涯多くの書物を出版していますが、中でも「養生訓」が有名であり、今でも読み続けら
れているベストセラー本です。
■養生訓について
この養生訓は益軒が83才のときに書き上げたもので、自らの体験を基に、精神的修養と節
制による健康維持(心と身体の養生)を説いたものです。この書物は8巻からなっていま
すが、その中の「食養生」について簡単に紹介します。
1)教えその1:「人の命は我にあり」
「人の命は天命ではなく、自分にある」という老子の説を引用し、「養生が大事である」
ことを説いています。
2)教えその2:「腹八分」
飢えをしのぐ程度でよいとしています。
3)教えその3:「薄味淡白なものを食べ、脂っこいものを食べるな」
4)教えその4:「肉を多く食うべからず」
5)教えその5:「食事は楽しく食べ、ゆっくり噛んで食べること」
6)教えその6:「味噌、性和にして、胃腸を補う」
昔から大豆製品は健康によいとされていました。
7)教えその7:「酒はほろ酔い、タバコは性毒」
この300年前の教えは現在のがん予防や生活習慣病予防に一致しており、長きにわたり読
み継がれている理由であると思います。
(CLINICIAN ’05 NO.536 p15~19より引用しました)