●乳がん
■頻度:
日本の女性の14人に1人、年間約7万人もの女性が乳がんの診断を受けています。
乳がんは30代後半から急激に増加し、40代後半〜50代前半の閉経前後にもっとも発症率
が高くなっています。
■乳がんの分類:
1)遺伝性乳がん:胚細胞の遺伝子変異により発症したと考えられる乳がんです。
アンジェリーナ・ジョリーさんが、母親と叔母を乳がんで失ったことから、遺伝子検査を受
け、その結果、予防的に乳房を切除再建したことが世界中に報道されました。
2)家族性乳がん:遺伝性の有無にかかわらず家族に乳がん罹患者が多数いる乳がんです。
3)散発性乳がん:遺伝性も家族歴もない乳がんです。
★乳がんはこの3つに分類され、1)の遺伝性乳がんは5〜10%、2)の家族性乳がんは15〜
20%、3)の散発性乳がんは70〜80%を占めています。
★1)の遺伝性乳がんの90%はBACA1、BACA2という遺伝子の病的変異がかかわっているこ
とが明らかになっています。これらの遺伝子は卵巣がんの発症にも関与しているため、合わ
せて「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群:HBOC:Hereditary
Breast and Ovarian Cancer
syndrome」と呼ばれています。遺伝子検査を行う場合には遺伝子カウンセリングが必要です。
■乳がんの発症:
乳がんの発症には卵巣から分泌されるエストロゲンの影響を強く受けます。エストロゲン
は初潮から閉経に至るまでの女性の健康や妊娠・出産を支える大変重要なホルモンです。
エストロゲンは妊娠中や授乳中にはその分泌が抑えられます。以前の日本女性は多産のた
め、エストロゲンの影響を受ける期間が少子化の現代よりも短く、乳がんの発症率も今の
1/3以下でした。
■乳がん発症の危険因子:
1)初潮年令が早い(11才以下)
2)初産年令が高い
3)妊娠・出産数が少ない
4)閉経が遅い
5)肥満
6)アルコールをたくさん飲む
7)欧米型の食事を好む
8)家族に乳がん卵巣がんになった人がいる
■今できること:
乳房は身体の表面にある臓器であり、自分で見て、触ることができます。
月に1回の自己検診をやりましょう。そして40才になったら乳がん検診を受けましょう。
日本は先進国の中でも特にがんの検診率が低く、アメリカのマンモグラフィー検診の80%
以上に比べ日本の乳がん検診率は全国平均で20%以下です。
日本の乳がん検診は40才以上に対してマンモグラフィーを原則として視触診を併用した方
法を2年に1回(隔年)行われています。また気になることがあれば、検診にとらわれずに
健康保険での診察を受けてください。
※上記内容はCLINICIAN vol60 no623より引用しました。